《MUMEI》
普通の青春
「…って、二人に言われたんだけど」


「…何で、俺に報告?」


「真司、頭良いから」


俺の言葉に、真司は苦笑した。


相田先生と同じ位この合宿に力を入れている部長を姉に持つ真司は、俺達よりも更に早く来ていた。


力のある守と拓磨の二人は、演劇に使う道具を部室から体育館のステージに運んでいた。


俺と真司は、部室棟の横にある合宿所の設備チェックを行っていた。


「俺に訊きたい事でもあるわけ?」


風呂場のシャワーの出を確認しながら、真司は俺を見つめた。


「普通に合宿で青春って、何するわけ? 俺、合宿って初めてだからわかんなくて」


「別に、特別な事は無いよ」


真司は、次に風呂場の電気を確認した。


「普通に合宿するだけ。皆で飯食って風呂入って寝るだけ。
後は…夜、花火したり…
ん? どうした?」


真司は、固まってしまった俺を見つめた。


(飯…風呂…)


「あぁ、そうか。祐也は風呂はダメだったよな」


俺が水泳を休んでいる事を知っている真司は、風呂は強制ではないと教えてくれた。


「まぁ、できれば入った方が友情は深まるけどな」


真司の言葉に俺は答えられなかった。

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