《MUMEI》 誤解を招く発言「さ、とりあえず『俊彦』抜きのシーンから練習始めましょう」 (先生、本当に容赦ないな…) 俊彦さんに体育館の隅に引っ張られていく高山を、相田先生は笑顔で見送っていた。 「あの、先生…さっきの、蝶子…さんって誰ですか?」 一人の演劇部員が相田先生に質問した。 (確かに…) 台本には一度も『蝶子』という女性は出てきていなかった。 「俊彦さんの奥さんよ。今、子供達と実家に帰ってるの」 「それって…」 その時全員の頭に浮かんだ文字は、俺と同じ 離婚 だったと思う。 「待て待て待て!」 (聞こえてたのか) 高山を引きずりながら、俊彦さんが戻ってきた。 「違うから!離婚とか離婚の危機じゃないから!」 「そんな事言ってませんよ」 「普通は誤解されるだろ、見ろ!」 「…あ〜」 その時、俊彦さんの言葉を聞いた俺達の顔は、 『離婚じゃないんだ〜』 と言っていた…と、思う。 「お盆はお義父さん達が煩いからいつも帰ってるの! 洋子さんがどうしてもって言うから、泣く泣く来たんだよ!」 「子供達には感謝されましたけど」 前へ |次へ |
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