《MUMEI》 衣装合わせ「あ、俺。朝風呂入ったんで」 「ふうん?」 俊彦さんは、犬のような仕草で俺の体臭をチェックした。 「ま、いっか」 (良かった) 俺は、ホッとしながら皆を見送った。 …のも、束の間。 「見〜、つけた」 「うわぁ!」 入り口の隙間から見えた目と、不気味な声に俺は思わず悲鳴を上げた。 「失礼ね、私よ、わ・た・し」 そう言って姿を見せたのは、津田さんだった。 男子より先に女子は二つに分かれて風呂に入っていたから、近付いてきた津田さんからは風呂上がりのいい匂いがした。 「祐也は残ると思ってたのよね。水泳も休んでたし」 そう言って、津田さんは俺の手を引いた。 「ちょっ…何ですか?」 連れて来られた先は、女子だらけの部屋だった。 「私としては、二人きりが良かったんだけど、皆が見たいって言うから、ね?」 「…何を?」 「祐也の素顔と、生着替え」 (ちょっと待て) 顔はともかく、着替えは… 「着替え見たいのは、志貴ちゃんだけでしょ!」 慌てて希先輩が真っ赤になりながら訂正したが、 …隠れて着替えができるスペースはどこにも無かった。 前へ |次へ |
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