《MUMEI》
ふくれっつら



部屋の中は、一瞬にして静まりかえった。


「じゃあ、俺、脱ぎますね」


俺は少しイライラしていた。


「…いい」


「はい?」


「いいわ、田中君、そのふくれっつら。
思わずこっちが機嫌とりたくなるような、言うことききたくなるような、可愛い感じ!」


『すねた顔も可愛いよ、祐也』


「は、はぁ…」


相田先生の勢いに俺は押されていた。


「ダメよ、先生!
祐也は私が最初に目をつけたんだから」


津田さんが俺に近付く相田先生を押し退けた。


「先生!男子が戻ってきます!」


部長が慌てて叫んだ。


「前髪下ろして!危ないから!」


部長の言葉に一番慌てたのは希先輩だった。


「詳しくは言えないけど、祐が興味持ったら田中君、危険なの」


「はい?」


小声で説明する希先輩の言葉の意味が俺には理解できなかった。


(だって、祐先輩、受けだぞ?)


ヘアピンを取りながら、俺は首を傾げた。


「祐也!お前、女子部屋にいるとは…って、何だ?その格好?」


真っ先に来た拓磨が見たのは、ヒラヒラなYシャツに短パン・ハイソックスをはいた俺の姿だった。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫