《MUMEI》

そうだ!
あのバターがバッグの中にあるはずだわ。

今日の昼ごはん。社員食堂でパンについてきた小さなカップに入ったバター。

カロリーを気にしているからめったに塗らないバター。

おもむろに取り出し、指先ですくう。

まんべんなく顔全体に塗り、少しバターの香りにむせる。

その香りも、いつしか嗅覚に慣れ親しみ、気にならなくなる。

眠れない……

そうだ、ベランダに干した洗濯物をサトルは取り込んでくれただろうか…

電話をかけてみる。

10回…20回…呼び出し音を鳴らしてもサトルはでなかった。

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