《MUMEI》

「サンタさん、僕にカクテルを一杯奢らせてください」


そう言って僕はミキシンググラスの中に材料となるブランデーとスウィートヴェルモットを丁寧に流し込んだ。
そしてゆっくりとかき混ぜる。
クリスマスキャンドルの灯りに揺れる子供達の無垢な笑顔を頭に描きながら…


「さ、出来ました。
お気に召していただけると嬉しいのですが」


「ほお、綺麗な色をしておるのぉ。
ご好意に甘えて遠慮なくいただくよ。
で、これは何と云うカクテルかの?」


「“キャロル”です。
あいにく僕は歌が下手なもので、明日の夜あなたが必ずやって来ると信じてる日本中の子供達に代わってカクテルで賛美歌を贈らせてもらいました」

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