《MUMEI》

「ありがとうございました。
また来年のクリスマスもお待ちしておりますから」

僕はそう言って老人が置いて帰った紙幣に目をやった。



“まさか、こんな事が!?”



その紙幣は“デンマーク・クローネ”。
サンタクロースの故郷であると言い伝えられているグリーンランドの通貨だったのだ。

僕は慌てて老人の後を追って表に飛び出した。
しかし、たった今このドアから出て行った筈なのにその姿はどこにも見当たらない。


次の瞬間、BARのあるテナントの屋上から『ハァッ!』という掛け声と共に夜空へと飛び立つ影が見えた。


いったい誰に話せば信じてもらえるのだろう、それが八頭のトナカイが引くサンタクロースのソリだったなんて…




TOUGARASHI'S BARのレジの一番奥には、今でもサンタクロースの残したデンマーク・クローネが大切にしまい込んである。




Merry Christmas.

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