《MUMEI》
意外な気配り
「お前、もしかして、何か持病あったりする?」


「無いです」


「なら、精神的なやつ?」

「…」


祐先輩の言葉は、俺の胸に刺さり、痛みを与えた。


「まぁ、いいや。来いよ」

そう言うと、祐先輩は無駄に強い握力で、俺を引っ張って台所に連れて行った。

「飲めよ」


「…これ?」


祐先輩が冷蔵庫から取り出したコップの中には、乳白色の飲み物が入っていた。

「特製ドリンク。牛乳は飲めるな」


俺は頷いた。


「固形物が無理なら、そう言え。無理矢理食わせるほど、俺は鬼じゃない」


祐先輩ならそれくらいやりそうだと、それをする為に俺を台所に連れてきたと思っていた俺は、正直かなり驚いた。


「俺は、料理は好きだけど、それは喜んでほしいからだ。
喜ばないのに無理矢理食べさせるような真似はしないし、そんな物は作りたくない。
普通はそうだろ?」


「そうなんですか?」


同意を求められても答えられない俺は逆に質問してしまった。


「いいからさっさと飲めよ。花火終わっちゃうだろ」

そう言った祐先輩は少し照れているように見えた。


俺は急いでコップの中身を飲み干した。

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