《MUMEI》

(あと20分…


ごまかしきれるのか?


…いや、


難しいだろうな。


くそ…!!


痛い…!!


汗が凄い出てくる…。


ヤバい…


痛い…


痛いよ…)


クロの肩、


やはり肩から落ちたのは大きかった。


腕が90度以上上がらない。


それ以上上げようとすると激痛が走った。


(あと…


あと20分なのに…)


涙が出そうだった。


悔しかった。


しかし、クロは泣かなかった。


そんな顔でコートに戻るわけにはいかなかった…


(もう少しで優勝なのに…)


無人の廊下に、


1人座り込むクロ。


右肩を抑え、行き場のない悔しさの置場所を探した。


盛り上がる会場に比べ、


不気味な程静かな廊下に…


足音が聞こえた。


(ヤバい…


誰か来た…)


しかし、疲労からすぐに立つことが出来なかった。


(ダメだ…


バレる訳にはいかないのに…)


クロはうつむき、


顔を隠した。


(頼むから…


通り過ぎてくれ…!!)


足音は、


クロの前で止まった。


「…小太郎?」


聞き覚えのある声に驚き顔を上げた。


「…美紀。」

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