《MUMEI》

◇◆◇

「神夜」

「‥っ?」

 竹千代の思い詰めたような眼差しに、神夜は、はっとした。

 そうっと手を重ねてきたのを恥じらうようにしながら、神夜は俯いた。

 もしも顔を上げ、傍らの君の瞳を見てしまったら。

 今この場に及んで許されぬ事をしでかしてしまうに違いない。

 長い黒髪が頬にかかっていた為、竹千代には神夜が頬を染めている事が分からなかった。

 その華奢な白い手を両手に包み込み、艶やかな黒髪に指を滑らせた。

◇◆◇

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