《MUMEI》 徳和の馬鹿野郎「待ってたよ。」 「そりゃあそうだよな。アンタが呼んだんだ。」 ホテルの一室に呼び出された。 結構な値段のするとこだと思う。 相変わらず贅沢趣味だ。 「昔みたいに名前で呼んでくれよ……」 「あのさ、もうそういうの効かないから。 俺には好きな人居るんだ。だから、自殺未遂とか迷惑だ。」 手首に巻き付く赤い傷痕が生々しい。 「……是清は俺が居なくて平気なのか?」 青白い顔をして見つめてくる。 「こんな弱い奴だと思わなかった。アンタは冷静で聡明でいつも話の中心で、……彼女を最優先した紳士だったよ。 いつだって自信に溢れてたじゃないか。」 これは、徳和じゃない。 前へ |次へ |
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