《MUMEI》

◇◆◇

 長い吐息。

 安堵の溜め息だった。

 姫君は優しい温もりに包まれながら、閉じていた瞼を半分程開けた。

 そこには闇しかない。

 だが伝わる温もりは、確かに感じていた。

「ねぇ‥」

 神夜は己の背に被さっている若君に囁く。

「さっきは‥ごめんなさい」

 表情を見られる事を恐ろしく思うあまり、神夜は顔を背けたのだった。

 それを竹千代が怪訝に思っているのではないか。

 それが神夜には気掛かりでならなかったのだ。

◇◆◇

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