《MUMEI》
祐先輩と拓磨
「何か、今絶妙なタイミングで邪魔された気がする…」


(俺もそんな気がする)


俺と津田さんの視線の先には、ハイテンションな祐先輩と拓磨がいた。


(拓磨はわかるけど、何で祐先輩?)


「おい、祐也!お前もボーッと見てないで、花火やれよ!」


「うわ!いきなり向けるなよ!」


拓磨が持っていた手持ち花火を俺に渡す時、密かに殺意を感じた。


「はい、津田さんも」


拓磨は津田さんには、火の付いていない花火を渡した。


拓磨は自分の花火を津田さんに近付けた。


「いい、祐也からもらうから」


津田さんは素早くそれをかわし、俺の花火と自分の花火をくっつけた。


…密かどころか、ものすごい殺気を感じた。


「祐也!こっち、まだ花火残ってるぜ!」


「あ、はい!」


(助かった)


俺の花火は津田さんより早く終わったので、俺は慌てて祐先輩の元へ向かった。

「…って、線香花火ですか?」


祐先輩の手元には大量の線香花火があった。


「そう。普通、花火と言ったらこれだろ?
俺、好きなんだ」


(そういうもんか?)


生まれて初めて花火をする俺は、祐先輩に言われるまま、隣にしゃがんだ。

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