《MUMEI》
希先輩の忠告
(何だよ一体!?)


俺は合宿所に戻り、洗面所で顔と腕を洗っていた。


(あの笑い方、触り方…)


どう考えても、俺を性的対象として見ている。


「ふざけんな!」


「キャッ」


(…へ?)


思わず叫んだ俺の後ろで、悲鳴を上げたのは…


「希、先輩?」


高山と一緒にいたはずの希先輩だった。


慌てて走ってきたらしく、希先輩の髪や浴衣が少し乱れていた。


「どうしたんですか?」


タオルで顔を拭いてから、俺はできるだけ冷静に対応した。


「あ、のね。祐の事なんだけど…」


「祐先輩?」


俺の怒りが伝わったのか、希先輩は微かに震えた。


「あの、祐はね、普通じゃないの」


「みたいですね」


(もう、二股かけてる位だし)


「彼女がいても、気に入ったら…行動しちゃうの。
だから、合宿に来るって言った時、心配だったの。田中君の事が」


「それって、俺を気に入ったって事なんですか?」


希先輩は頷いた。


「SEXの相手として?」


「………多分」


希先輩は真っ赤になって頷いた。


(男でもヤレるわけか、あいつは)


俺は頭痛がした。

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