《MUMEI》

「いつから妊娠してんじゃないかって気づいたんだ?」




「…うん、2日前かな…だからね、薬飲まない様にしてるからめっちゃ寝不足でさ」




隆志無し、眠剤無しだと俺は寝つけない。



でももし腹ん中に胎児がいたら薬は絶対にいけない。




だから薬は飲めない。




「な〜、寝不足はお腹の赤ちゃんにも良くないし病院行こうぜ?
俺付き合うならさ、な?」




「そうはいくか!そんな事したら裕斗が父親だって思われんじゃん」




「じゃあ隆志に頼めよ、親父になるかもしんねーんだから付き合わせろよ」




「―――は、恥ずかしい……から…ムリ」








俺は裕斗に引きずられる様にマンションを出た。





「ほら保険証出せ」

「う、うん…」




俺のマンションから比較的近い小さな小児産婦人科に連れて来られた。



ちょっとお年を召した妊婦さん一人だけが待合室に座っているだけで酷く静かな雰囲気。




コソコソしながら保険証を受付けのおばさんに出していると




「今日はどうかされましたか?」



と、いきなり現れた白衣のおばさんに聞かれた。




「あの…、すみません、こいつ直接先生に話したいらしいんです…」




俺の肩をいきなり抱き寄せて裕斗はそう言ってくれた。


「――――
…はい、分かりました」



おばさんは俺に向かってにっこり笑って、お待ち下さいって言った。




直ぐにさっきの妊婦さんが診察室に呼ばれ、ちょっとして出てきた。


手になにか紙を持っていて



「それは何ですか?」



裕斗がなっつこく尋ねだした。
妊婦さんも凄い嬉しそうに



「エコーの画像よ、この真ん中のが赤ちゃん」



ほらって見せてくれた、俺も思わず身を乗り出して覗き込む。






それは白黒のレントゲンみたいなやつで言われてみれば赤ちゃんの形に見えなくもない。



「…俺もこれ貰えるのかな…」



「貰えんだろ?ちょっと楽しみだな」




するといきなり名前呼ばれた。




頑張ってって俺を見据えながら応援してくれた裕斗の為にも




「うん…」




俺はちょっと涙ぐみながら診察室のドアを開けた。

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