《MUMEI》
満員御礼
その日、俺のバイト先のコンビニは、とにかく知り合いが来る日だった。


まず、津田さんが様子を見に来て、父親が経営するショップの差し入れにと、大量の菓子類を購入した。


それから、希先輩と高山がアイスを買いにきた。
ただし、二人はデートではなく、あくまで俺の陣中見舞いだと言っていた。


更に、初めて守がやってきた。


守の目的は、俺の夏休みの宿題の進み具合のチェックだった。


夏休みは残り僅かだったが、守はほとんどやっていなかったのだ。


守は俺の為にと、雑誌を大量に購入しようとしたが、その大半が成人向けなので、俺は拒否した。


「三十一日に写させてやるから、とっとと帰れ」


俺の言葉に、守は数冊の雑誌を購入して帰っていった。


要領のいい真司と違い、守と同じように大半の宿題が残っているはずの拓磨は姿を現さなかった。


(嫌われたかな)


俺は、合宿で感じた拓磨の殺意に近い怒りを思い出していた。


「今日は田中君の知り合いばかりだね」


「そうです…!?」


次に来た知り合いに、俺は固まった。


「いらっしゃいませ」


何も知らない店長は、その二人に笑顔を向けた。

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