《MUMEI》

翔太は、


背面パスを投げていなかった。


ボールを持った手を後ろにやると…


左肘でボールを弾いた。


「…エルボーパス。


バスケの技術なんだけどな…


まさかハンドでこのプレーをやるヤツがいるなんて…」


ボールは聖龍クラブ。


しかし、堀内にクロは付かない。


翔太が付いた。


「あいつら勝手にやりやがって…」


海南ベンチは、


どうすることも出来ない。


クロが下がらない限り、


別の選手がコートに入ることは出来ない。


この試合はもう…


コートに立つ7人の試合と化していた。


「絶対守るぞ!!」


「おぅ!!」


堀内に付く翔太。


翔太には隙がなかった。


ハンズアップも出来ている。


クロも右サイドへ牽制をかける。


初めからカットに徹すれば、


左手でもとれる。


ディフェンスに隙のなくなり始めた海南。


…しかし、


「前出ろ!!」


山城が1対1を仕掛ける。


そして突破。


シュートへ。


「バシッ!!」


「…まだまだ甘いね。」


恭介が止める。


恭介も…


クロの気持ちに応えたかった。


『絶対優勝しような』


大会前、


恭介はそうクロに言っていたことを思い出していた。

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