《MUMEI》
固く閉ざされたドア
木製のドアの前に一人の白い少女が立っている。

少女はドアノブに手をかけ、何度か前後させるが、鍵がかかっているかのようにそのドアは開かない。

少女は軽くため息をつき、ドアに背を向け、クスリと妖艶に微笑み口を開く。


「ようこそ、時空間の狭間へ。あなたは一体どこから迷い込んできたのかしら?」

少女の目の前には、赤黒い髪の幼い少女が不機嫌そうに腕を組んで少女を睨み付けている。

「お前は其処で何をしている。」
「異界への扉がちゃんと閉じているか、確認していたのよ。」
少女は再びクスリと笑う。

「異界?」
「そう、この世界と別の世界へ繋がる扉ね。」

幼い少女の瞳が、まるで面白い玩具を見つけたかのようにキラキラと輝き、白い少女を押し退けてドアノブに手をかける。

「お嬢ちゃん、この扉を開いたらいけないわ。」

クスクスと笑いながら、この幼い少女が、扉を開けるのかを試すかのように、様子を見ている。
どうせ開かないのだから、足掻けば良いとでも言うように…

「アタシに命令するな。」
「クスクス…あなたの好きなようになさい。」

幼い少女は白い少女を一瞥し、ドアノブを引く。

バチバチと赤い火花が飛び散り、空気中に赤い稲妻が走る。
ドアが数センチ開くと同時に、異世界の風が、吹き込み、少女達の髪を乱す。

ドアを開ききり、幼い少女は満足げに微笑み、白い少女を見上げる。

「扉は開いたぞ。これで、アタシとお前は好きなところに行けるんだな。」

「そうね。」

少女の満足げな問いに白い少女は優しく微笑んで答える。



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