《MUMEI》
電話
――クッソ―……俊のヤツ!言いたいことだけ言って帰りやがって。

しかも全部正論だから余計ムカつく。

絶対に俊には頼らないで受かってやる!








――無理だ。

予備校にも通ってないオレに勉強を聞けるのは俊だけなのに、今さら気付いても遅い。遅過ぎる!!

イヤ、オレさえ謝れば済むことか?

いやいや、悪いのは遠慮もせずにズバズバ人が傷付くようなことを言う俊のヤツだ。

絶対に謝らないぞ。

俊がきついこと言ってゴメン、って謝って来るまで俊とは口もきかないから!









――と決めて約一ヶ月が経過。

好きな人とHしないだけじゃなく、しゃべらないなんて酷過ぎる…。


つーか俊も耐えるよなぁ。前みたいにヌいてやることもできなくて、今頃苦しんでるんだろうな。

それを想像するだけで笑える。

オレは俊が大学とバイト行ってる間に済ませているから、俊よりは大丈夫だ。


あの真面目堅物意地っ張り人間め。


オレの大切さがわかったか?

オレのように心の広い人をぞんざいに扱ったらダメなんだぜ!









――ピルルルルルルッ

「ケータイか?久しぶりに鳴るな。一体誰だよ」



パカッ



「………俊?」


なんで俊から電話がかかって来るんだ?


まさか面と向かって言えないから電話とか?


「ハーイっ、もしもし?」


電話の向こうから聞こえてきた声に、オレは腰を抜かしかけた。

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