《MUMEI》

診察台に乗って仰向けに寝ると、シャツ捲られて腹にプチュって冷たい液体かけられた。



お医者さんはモニターのスイッチ入れてぐりぐりって俺の腹を変な器具で撫で回してきた。



あんまりにも擽ったくて握り拳で耐えてたら助産婦さんにギュッと手を握られ



「大丈夫よ」




って言われてしまった…。





「う〜ん…、まだいるかどうかわからないねえ、小さ過ぎると写らない場合があるから…、――
一週間後またおいで?今度はパパも連れて…ね?」



「は、はい……」





助産婦さんがティッシュで俺の腹を拭いてくれて俺は起き上がる。




お医者さんはびっとエコーから紙を千切り



「はい、一応渡しておくよ?」



――さっき待合室で見た…




エコーの写真だった。



「――――はあ」


「う〜ん、う〜ん」



裕斗は珍しげに写真を天井にかざしたり斜めから見たりしている。

「だからまだ小さくて写ってないかもしれないんだって!」
真っ暗にしか写っていない写真を俺は取り返す。


「そっか、まだ妊娠は確定じゃないってか」



「してるよ!…してるもん……さっきから背中むずむずするし…」


「――背中?」



「そうだよ、裕斗はなんも知らないんだな?男が妊娠する場合は背中で赤ちゃんが育つんだぞ?だから背中は普段から冷やしちゃいけないんだ、ほらオマエそのタンクトップダメ!母親になる資格ない!」



「加藤さ〜ん」

「は〜い」



受付けのおばちゃんに呼ばれて会計済ませ、ふと振り返ると裕斗は何故か四つ這いになってゼイゼイ言っていた。


「ど、どうした?気持ち悪いのか?」



「ち゛ち゛がう゛…
あ゛う゛、ひっ…ダメ…ダメえ〜」


「もしかして!裕斗も妊娠してるんじゃ!おい保険証出せ!」


「も…もう止めて…頼むから…もう助けて〜」




大丈夫だって言い張るから渋々医院を出たが裕斗の顔色は明らかにおかしい。
耳まで赤いし無口だし。



「なあ、本当に平気?」



裕斗は無言でコクコク頷く。



「―ムリすんなよな」



そう言いながら俺はバッグから煙草を出してゴミ箱にポイッと捨てた。

「ちょっとお茶買ってくるから」



「なんで今煙草捨てた?まだ中入ってんじゃないの?」

「は?胎児に良くないからに決まってんだろ」




俺がそう言うと裕斗はまたその場にしゃがみ込み



「おい!やっぱり具合わりいのか?」



「ひ…ひ…――ちが…早くお茶買って来いよ…」

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