《MUMEI》
修羅場
(ハァ…)


バイトを終え、俺は自分の部屋の前に立っていた。


二人と一旦別れてから、一時間近くが経っていた。


しかし、俺の心の準備はまだ整っていなかった。


(これ以上、待たせるわけにもいかないしな…)


俺は、重い扉を開けた。


「おかえり」


「何でいるんですか!?」

俺の部屋にある小さなテーブルの真ん中を陣取っていたのは、祐だった。


「ん〜?、ちゃんと食ってるか心配でさ。そしたら、二人が来て、部屋に入れてくれた」


最悪の展開に、俺はめまいがした。


「座りなさい」


(俺の部屋なんだけど)


そう思いながらも、俺は安藤先輩の言葉に従い正座していた。


「祐、本当にこの子も好きなの?」


「うん」


「俺は好きじゃない!」


頷く祐を見て、俺は叫んだ。


「だってさ」


葛西先輩が冷静に言った。

「でも、俺、祐也好きだ」

「やめろよ!」

「やめてよ!」


叫んだのは俺と安藤先輩だけだった。


「田中君も困ってるし、俺も沙希(さき)もいるんだから、諦めれば?」


葛西先輩は、どこまでも冷静だった。


「だって、俺。男で抱きたいと思ったの、祐也が初めてだから」

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