《MUMEI》
とんでもない普通
祐のとんでもない告白に、俺達は唖然とした。


「私じゃダメなの?」


「そんな事言ってないじゃん。沙希は柔らかくて、気持ち良くて、好きだよ」


泣きそうな安藤先輩に、祐は微笑んだ。


「逞しい雅樹に抱かれるのも、大好きだからね」


「…それはどうも」


半分呆れながら、葛西先輩は頭を下げた。


「祐也はさ、何か、謎めいてて、気になるんだよね。…で、危なっかしい感じがして、守ってあげたくなるわけ。
こう、ギューッと、抱き締めて、ね」


「結構です」


俺は丁重にお断りした。


「まぁまぁ、遠慮しないで」


「「祐!」」


俺に近付く祐を、他の二人が止めた。


「何で私だけじゃダメなの?」


(…私『だけ』?)


「「沙希?」」


安藤先輩の言葉に俺達は固まった。


「あ、違うの!私達だけじゃダメなの?」


安藤先輩は葛西先輩を見て、慌てて訂正した。


「だって。俺は、好きなものは欲しいって思うから。それが普通だから」


「まぁ、祐はそうだよな」

葛西先輩は、笑いながら言った。


(甘すぎだ…)


「俺は、違うから」


俺は、きっぱりと言い切った。

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