《MUMEI》
一途な愛
「珍しいじゃん。祐也がそんな風に言い切るの」


祐が面白そうに笑った。


「迷惑なんだよ、あんたの軽い好きに振り回されて」

「酷いな。俺はちゃんと皆愛してるよ」


「ああそう。悪いけど、俺は、一人しか愛せないから」


俺が今でも愛しているのは、旦那様だけだ。


「情熱的だな。…母さんみたいだ。もしかして、好きなヤツいるのか?」


「いる」


物心ついた頃から、…もしかしたら、つく前から


今も、俺が好きなのは、旦那様だけだ。


「…どんなヤツ?」


「どんなって…」


『愛してるよ、祐也』


ズキッ


(痛っ…)


「どこにいるの?」





「…いいから、帰れよ」


「ケチだなぁ」


「帰りましょう、祐」


安藤先輩が、祐の腕を掴んだ。


(早っく…帰れ…)


祐の言葉で旦那様の事を思い出していた俺は


…泣いてしまいそうだった。


「祐。田中君の気持ちはわかったんだから、…帰ろう」


葛西先輩も優しく促した。

(帰れ、…帰ってくれ!)


俺は、うつ向き唇を噛み締めていた。


握り締めた拳の爪は、てのひらに食い込んでいた。


…そして、やっと三人が帰った。

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