《MUMEI》
勉強会
「ほら、拓磨」


守は自分の物のように、座った拓磨の前に俺のノートを広げた。


「津田さんは、ノート持ってきて無いんですか?」


「無いわよ。祐也のノートがあればいいでしょ。綺麗にまとまってるし」


津田さんの言葉に、拓磨は渋々俺のノートを写し始めた。


「祐也、数学教えて」


「それより、拓磨に国語教えてやって下さいよ」


俺の国語の宿題は、空欄がかなりあって、守と拓磨の役には立ちそうも無かった。


「祐也にも、教えたいなぁー」


「俺も教わりたいです!」

挙手したのは、俺ではなく、守だった。


(守がいて助かったな)


俺達三人のピリピリした雰囲気を全く察していない所は気になったが、守の明るさが、俺には救いだった。

「仕方ないわね。写し終えたらね。ね、祐也。それまで数学教えて」


再び話題が元に戻った。


「…津田さんは祐也がお気に入りなんですね」


せっかく和んだ雰囲気が、また元に戻り始めていた。

「うん。私、祐也が好きだから」


「え!?そうなんですか!?」


守だけが、顔を上げて驚いた。


(しまった)


驚かない俺を、拓磨が睨んでいた。

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