《MUMEI》
夏休み終了
その後、津田さんはそんな拓磨の告白を聞き流し、俺達に国語を教えた。


津田さんの教え方はかなりわかりやすいらしく、守と拓磨はすぐに理解したが、やはり俺には理解不能だった。


そして、俺は人に教えるのが下手だという事を知った。


(何故って言われてもなぁー)


決められた公式を使って解くだけの数学に、理由などあるのだろうか。


俺は、何も説明できなかった。


津田さんは、少しがっかりしていたが、守と拓磨はとりあえず夏休みの宿題が終わって安心していた。


「なぁ、普通、夏休みってこんなにいろいろあるのか?」


三人が帰った後、俺は忍に報告がてら電話をかけて質問した。


《…多すぎだ》


俺の報告を毎日聞いている忍は、いつもと同じ冷たい口調で答えた。


(あ、やっぱり?)


これが普通なら、世の中の普通の高校生は尊敬に値すると俺は思っていた。


《顔を見せる前からこれなら、見せたらどうなるか…》


「別に今更変わらないだろ?」


俺は、これ以上の事など起こらないと思っていた。


《甘い》


忍は呆れたように言い、それ以上は語らなかった。

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