《MUMEI》

「お待たせいたしました」痩せて背の高い女性が現れた。

(ん!?女店長か…)

歳は30前くらいで黒髪を後ろで一つに束ねている。
背は高く痩せているが華やかというよりも地味な雰囲気を漂わせていた。

僕の正面にまっすぐに腰掛けた。

「わたくし、細野と申します。」

彼女が名刺をテーブルの上に置き、スススーっと10センチ程僕の方へ滑らせた。
……こんな僕にこんなに丁寧にしてくれるなんて珍しい人だな…

僕の履歴書を「失礼」と言いながら広げた。

履歴書に視線を落としていながら、チラッと僕を見る。

何か顔についているのか………?

女性は静かにひとつふたつの質問をしてきたが、どれも履歴書に書いてある事柄だった。

「では、3日後の午後2時にお電話いたします。不合格の場合はいたしません。」
「あ…………はい。」

彼女は無表情に近いが失礼な印象は全く受けなかった。笑顔がほとんど見受けられないけれど……。

3日後の2時か。
僕は、大阪のライヴハウスでリハーサル中だな……………………。

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