《MUMEI》 ルージュの部屋その夜、夢を見た。 サトルの夢を見た。 私にとても優しいサトルの夢を見た。 夢の中で、私たちは愛し合っていた。 朝目が覚めた時、自分がそんな夢を見たことに、どんな意味があるのか、ふと考えた。 答がみつからぬまま携帯にメールが届いた。 「里奈、おはよう。 昨日はごめんね。ありがとう。今日は仕事?」 「おはよう。ゆっくりできた?今日は仕事だよ。」 「何時に帰る?」 「え〜っと… 7時過ぎかな☆」 「わかった。待ってるね。」 怪しい………………………………………………………… サトルはどちらかと言うと自分主義だ。 あまりにも我を通す性格にあいそをつかしかけたことも何度もある。 だけど、甘く優しい時もたまにあり、それで私は彼の全てを許してしまう。 サトルはB型。 私はA型。 私はサトルの幼なじみに会いたかった……… 私を紹介してくれず、その上、ホテルに一人泊まらせるなんて! イライラしながら仕事を終える。 顔はゆうべのバターでテカり気味。 最……悪……。 今夜は噛み付いてやろう!たった1日ぶりの部屋なのに、やけに他人行儀な私の部屋。 白塗りのゴツゴツした外壁の3階建てで細い階段は薄暗い。 洋画にでてくるような外観に一目惚れして借りることに決めた部屋。 キッチンや部屋にはハーブを飾り、パッチワークで作った鍋しきを愛用している。 調味料はクリスタル瓶に詰めてオブジェっぽく並べる。 日本の実家は湿気っていて私の性に合わない…… サトルはオフホワイトのじゅうたんに肩肘をつき顔を支えてテレビを見ていた。 ………なに?何かが違う。 確かにサトルはタバコを吸うけれど、、部屋がこんなにタバコ臭かっただろうか。 「幼なじみも吸う人だったのね」 「あ、吸うね」 灰皿の吸い殻を捨てれば、まだ匂いも軽くなるかしら… 銀のUFOみたいな灰皿を流しの方に持って行く。 三角コーナーにまず捨てよう。 なに? 口紅? 底のほうに埋もれていた一本に赤い口紅が…… 体が熱くなってくる。唇が震える。自分でも止められない。 どうしよう… どうしたらいいのか… 「お〜い!早くこっちに来なよ。」 平然と私を呼ぶサトルに、不快感を覚えた。 前へ |次へ |
作品目次へ 感想掲示板へ 携帯小説検索(ランキング)へ 栞の一覧へ この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです! 新規作家登録する 無銘文庫 |