《MUMEI》
写真の男
 時刻は10時半を回っている。
俺はインターを出て最初に見つけたコンビニの駐車場から先方に連絡を入れることにした。親父から預かったメモを取り出し、番号を押す。

岩田耕平

改めて見てもやはり聞き覚えのない名前だ。

─『はい。岩田です』

しわがれた特徴のある声だった。

「あ、夜分に恐れ入ります。私、柏木進也と申します。柏木達也の息子です…」

─『え!?たっちゃんの息子さん?
こりゃ驚いた。どうしたんだね突然』

電話に出たのはどうやら当人らしい。
俺は続けて用件に入った。

「実は父に頼まれたお届け物と伝言がありまして…。
あと20分もあれば近くまで行けると思うんですが、何か目印になるようなものを教えていただけませんか?」

─『届け物と伝言?うぅん、何だかよく分からんがとにかくこっちに来てもらおうか。今居る場所はどこだね?』

「友生I.Cを降りたところです」

─『じゃあ、そのまま56号線を南に進んで3qほど走れば右手にスパランドが見えてくる。そこの駐車場で待ってるよ』

「分かりました。ありがとうございます」


さぁ、いよいよだ。
俺は再びMKUにまたがり、約束の方向に向けてウインカーを点した。

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