《MUMEI》
追章 仏壇
母が亡くなり、数年経ち、母が居ないことが当たり前になってきた。
しかし、目の前には仏壇がある。
その中の遺影には、笑顔の母がいる。
益美は、毎日母を思う。
毎日娘に言う。
「おばあちゃんの顔忘れちゃだめよ、ここにいるのよ、悪いことしたら、夢にでるよ!」

生前怖がりの三姉妹は、母に、
「もし、死んでも、夢枕にこないでよ!私たち、怖いから」

それは現実になって、何年経っても、三姉妹もその子供達も、母の夢をみることはなかった。

益美は、
(もう、でていいよ)
と、つぶやく。

もっと、そばにいたかった。甘えたかった。孫の成長、見せてあげたかった。

そんな、事を、最近思う。いなくなって、何年か経って、母の大切な存在に気付く。

確か、お坊さんが言ってたなぁ
「供養とは、墓を立派にすることでも、葬式や、年ごとに行う、周忌供養を、丁寧に、やることでも、ない。 亡くなった方を、毎日、思い出す事が、本当の意味での、供養」
だと。

数日、線香を忘れていた。母を忘れてたことに気付く、益美。

「おかあさん、あいたいよ」
そう、言って、線香を手向けた。

涙と供に。

自殺思い留まってありがとね。
生んでくれてありがとね。育ててくれてありがとね。
妹を二人も生んでくれてありがとね・・・

ありがとね。

線香の香りが母の香を思い出させた。

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