《MUMEI》
「クリーム…コロッケ…」
「なんか油ギッシュだったからなあ、しかも生臭かったし…」
「はあ…、あの…コロッケ……」
あんまりおいしくなかったけど、わざわざあのものぐさ裕斗が作ってくれて、しかも持ってきてくれて。
それでも食い進まない俺の代わりに隆志は五個中、四個仕上げてくれた。
ちなみに俺は半分がやっとだった…。
「惇そんなに食べなかったのになー、アイツの作るモノはちょっとした科学兵器か?」
俺は隆志に支えられベッドに促され
「ちょっと横になりな?」
「うん…」
躰をベッドに沈めた。
「――で、この真っ黒な写真なに?」
「はあ…、―――クリームコロッケでゲッソリする俺の腹画像。
なんだよもう、赤ちゃん出来たのかと思ってドキドキしてたのにー…」
「あ、赤ちゃん??」
「うん…、俺達の赤ちゃん…」
すると隆志は俺の額に額をつけてきた。
「―――――熱はない…」
「うん、幸いない」
「な、まさかとは思うけど、―――まさか妊娠したと思って産婦人科に行った訳?」
「だからさっきからそう言ってんじゃん、
…はあ…、なんか力抜ける〜…、ごめんね騒がせて、今度は良く考えてから動こう…
ごめん…ちょっと寝たい…」
隆志が傍にいる安心感からいきなり睡魔が押し寄せてきた。
添い寝してくれる隆志の胸に頬を擦り寄せ抱きつきながら瞼を閉じる。
「なあ、…―――
とうぶんは避妊しような?」
「うん……」
――2007・8月某日現在…
加藤惇(19)は…
まだ男も妊娠出来ると信じているらしい…。
信じて疑わない惇に真実を告げられないでいる隆志と、面白いからほっとく裕斗。
間違った知識は上二人の兄によるものだと後に二人は知る事となる。
とりあえず前編END
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