《MUMEI》
一針
「七生、また北条さんに会いに行きなよ?俺もついて行くからさ。」

帰り道、念を押しとく。

「どうした?今のうちに親と馴染んどくっていうことー?」

この、ウルトラ馬鹿タレが……。

「違うの、もっと親御さんを思いやれってこと。
俺、色々怒っていたんだからね?七生はもっと思いやりを身につけておくべきだ。」

本当、神部に妬いてた俺は馬鹿みたいじゃないか。

「二郎、しゅーちゃんは確かに父さんで家族だけど、

二郎だって俺の大切な家族だから、ずっと一緒に居る為にはテストで勝負懸けるしか無い。」

凛々しい顔立ちだ。

「……七生の考えにしては真面目だな。」

「俺の一途、受け止めてくれた?」

下唇に人差し指を置くかわらしい動作がミスマッチだった。

「秘密がもう無いならね?」

重ねてきた手を払い退ける。

「ツれないなあ。」

両頬を膨らました。
頬の空気を潰すと前髪が七生の吹いた息で揺れた。



「七生、十八歳おめでとう。」

七生と額を付ける。
ちゃんと祝いの言葉を言ってあげた。

「…………十八になったら結婚出来るな。」

七生の澄んだ黒目が俺を映した。

「日本じゃ無理だよ」

「約束なら出来る。」

小指を結んで来た。

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