《MUMEI》

「俺も、……お前だけが俺を唯一愛してくれた。」

……今は違う。


「もう、俺はお前のトコに戻らないから。
社員も戻って来た、仕事も軌道に乗っている。お前が隣に居ないといけないと思っていたことはなんでもないことだったんだ。」

俺が依存していただけのことだったんだ。

「……必要無いんだな?」

「そんな顔で見るな。」

スーパーの便所で俺を無理矢理抱いた男みたいだ。

そんな、
可哀相な顔だ。



「是清は、手放してしまうと戻らない気がしたんだ。だから奪ってやったんだ。俺へ戻ってくるように。」

俺が散々惚れてフラれまくっていた男が俺にこんな嫉妬を抱くなんて。


「馬鹿な奴だよ、あのまま俺と起業してりゃあ良かったのに。
俺とお前、次会う時は他人だからな?」

徳和を助けるには、どうすればいいのか。
気付いてしまった。


「……是清?」


俺は徳和をベッドに誘導する。

「選択だ。
俺を抱かず、俺の未練に引きずられながら一生惨めに生きるか。
俺を抱いて、キッパリ俺を忘れて幸せになるか。」

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