《MUMEI》

『…坂城くん?』


─ここで少し
坂城渉の説明をしよう!─


坂城渉とは…
常に学年トップの成績でスポーツ万能…
おまけに長身・イケメン…といったいわゆる典型的な“モテ男”である!
実家も大金持ちらしく、文句なしで、学校中の女子のアイドル的存在。
私も、入学した当初は狙っていたが諦めた。
学校中の女子を敵にまわすのも嫌だし…。
何より、この坂城渉は無口で笑わない事が有名で、なんか取っ付きにくかった…。


─説明終了─


では本題へ…。


『…坂城くん?』


『さっきの話って本気?』


『………?』


『“金のいいバイト”探してるって話…。』


『(…え…聞いてたの?)
…う…うん。
まぁ…本気だけど…。』


『じゃ来い。』


というと、坂城くんは足早に学校を後にした。


『…ちょ…ちょっと
…坂城くんどこ行くの?』


『…………。』


何も答えない。


数十分、歩いた所で坂城くんの足が止まった…。


『……ここ。』


坂城くんは、住宅街の中でも、一番大きな一軒の家を指差した。


『…え?…ここが何?』


『…お前のバイト先。』


“はぁー!!?”


訳が分からない。
坂城くん…バイト先紹介してくれようとしてたの?
…ってか何で?


『…早く来い。』


『…うん。』


なんか意味分かんないけど、私もバイトしなくちゃいけないし、とりあえず話だけでも聞いてみるか…。


すると家に入るなり、坂城くんは大声で叫んだ。


『稜兄(りょうにぃ)!』


“…りょう兄?”


しばらくすると、大きな階段から眠そうに目を擦りながら男の人が降りてきた。


“…か…かっこいい!!”


少しテンションの上がった私を放置し、二人の会話は続く。


『稜兄。…今日からバイトの橘 璃久。…どう?』


『ふ〜ん。』


稜兄と呼ばれる男は、私を上から下までじっくりと観察し、胸元に目を止めた。

『…君…Fはある?』


唐突な質問に私は思わず、


『はい。Fカップです。』


と答えてしまった…。


稜兄と呼ばれる男は、それを聞くと満足そうに微笑みながら坂城渉に言った。


『合格!!』


私は、訳が分からずただ、茫然と立っていた。


『…良かった。
俺着替えてくるから…。』


そう言うと、坂城渉は二階へと消えていった…。


“どういうこと…?”


とりあえず事情を説明してもらわなきゃ!!


私は、勝手にリビングに上がり込んで坂城渉が降りてくるのを待つことにした。

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