《MUMEI》
Kleines Freunde.小さな友達。
  
「えっ…ココ?」

そこはどう見てもお城のような建物で、とても人が住んでるようには見えない、自分の中の常識からすると…いわゆる博物館や資料館のような雰囲気だった。

克哉さんに連れられて、まさかこんな所まで来るとは思わなかった。


最初に『私のもとに来てくれないか…』と言われた時は息が止まるくらい嬉しかったけど、結局はそんな事言っても長くは続かないだろうと内心は思っていた。

僕もちょっと長い間旅行に行く、くらいの考えでいたのだけど克哉さんはどんどん話を進めていってしまって…。

パスポートの申請を手伝ってくれたのまでは良かったんだけど、勝手に部屋の契約を夏いっぱいで解約してくるわ、申し訳程度にあった家具も処分してしまうわ…。

これから克哉さんと一緒に生活して行かざるを得ない状況に、段々と追い込まれていってしまっていた。


克哉さんの性格が”結構強引だよ”とは双子くん達から聞いていたけど、まさかここまでとは思わなかった。

最初は僕の荷物は別に送ってしまおうかと言っていたけど、そんな送るほどの荷物は持ち合わせていなかったし、それなら旅行鞄で持って行ってしまおうと言う話になった。

本は雑誌くらいしか無かったので捨ててきたし、ゲーム機は重いので双子くん達にあげてしまった。

すごく驚いていたけど、あんなにはしゃぎ回って喜んでいる姿が見れたので良かった。

外国の子供ってやっぱりああなんだな…。

後はこの部屋に来てから揃えた服とか申し訳程度の荷物を初めて買ったスーツケースに詰めていると、急に寂しくなってきて…思わず泣けてきてしまった。

悲しかったワケじゃないけど、何というか何も無くなってしまった部屋を見て、今まで気を張っていたものが消えてしまったような気がして箍が外れたように涙が溢れてきた。

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