《MUMEI》

◇◆◇

「ねぇ」

「‥?」

「私‥‥」

 神夜が口ごもると、竹千代は只黙って神夜の頭を優しく撫でた。

「僕が側にいるから。ずっと。だから、安心して」

 こくり、と小さく頷くと、神夜は微笑した。

「ありがとう‥」

 ふっ、と緊張が解けたらしく、姫君は静かに涙を零した。

 頬を伝うそれを、若君がそっと拭ってやる。

「恐がらないで。僕が付いているから」

 再び頷くと、姫君は竹千代の頬に手を伸ばした。

◇◆◇

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