《MUMEI》

『お邪魔しまーす…。』


誰もいないリビングに上がり込むのは、やっぱり気が引けた。


大きなリビングのあちこちにはゴミが散乱し、足の踏み場もない…。


“汚いな…。”


私は、とりあえずソファーの物を片付け、坂城渉が降りてくるのを待った。


“………。
何時間経っただろうか…?坂城くんは降りてこない。”


もう外は真っ暗だ…。
お腹もすいた…。
帰ろうかな……。


私が諦めて帰ろうとすると、誰かが二階から降りてくる足音が聞こえた…。


“坂城くんだ…。”


『…あれ?
まだ片付いてないのか。』


“………。はい?”


私は、耳を疑った。


『…はぁ〜。
坂城くん何言ってんの?
いきなりここへ連れてきてずっと置いてきぼり…。
ちゃんと説明して!
ここは?バイトって?
稜兄って人は誰なの?』


私の質問攻撃に、渋い顔の坂城くん…。


『…あ〜。
ここは俺んち。…お前バイト探してるって言うから…俺んちで働くかなって…。…んで稜兄は俺の兄貴。
えっと……あとの質問は何だっけ?』


『もうっ!!』


私は、坂城くんのいい加減な態度が頭にきた!!


『私帰る(怒)!』


立ち上がった私を坂城くんは慌てて引き止めた。


『…ちょっと待てよ。
…お前、金が必要なんじゃねぇの?』


“ドキッ”


確かにそうだった…。
早く100万円貯めないといけないのに、他にバイトのあてはない…。


『…なっ?
俺が悪かったよ。ちゃんと説明するから座れよ…。』


『…うん。』(渋々…)


それからの坂城くんの説明はこうだ。


先週から両親は3ヵ月間、仕事で海外へ行っている。


坂城くんと大学生の兄(稜兄)は、日本でお手伝いさんを雇って生活するはずだったが、稜兄が何人ものお手伝いさんをクビにしていて坂城くんは困っていた。


そんな時、私がバイトを探していると聞き“橘 璃久なら稜兄のタイプだろう”と、ここへ連れていたと言うのだ…。


仕事内容としては、坂城兄弟の食事と洗濯・掃除…と至って簡単なことだった。…でも一つ問題が。


『…坂城くん。
話は分かったんだけど…
給料っていくら貰える?』


私は、一刻も早く100万円を貯める必要があった…。給料次第では何だってやるんだから!!


『…あ〜。給料?
…そうだな。普通ってどのくらいなんだ?』


坂城くんはバイトとは、縁遠い生活をしてきたのだろう…。…よしっ!!
私は思い切って言った。



『…3ヵ月だよね?
…普通は…そうね…100万円くらいじゃない?』


『…ふ〜ん。
じゃ100万でどう?』


“(やった!!)”


『喜んで引き受けます!』


即決だった…。


こうして私は3ヵ月間で100万円を稼ぐ為“坂城家のお手伝いさん”になった…。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫