《MUMEI》

克哉さんが呆然としている間、僕はその小さい子に手を引かれると奥の方にあった部屋に連れて行かれた。

「あのねぇ、ココなの見て見て〜♪」
「えへへ、おじゃましま〜す」

チビちゃんに言われた通りその部屋の扉を開けると、そこには見たこともないようなファンタジーな別世界が広がっていた。

「か…可愛い〜///」
「くるみちゃんの部屋なんだよぉ♪」

外国の映画やドラマでしか見た事の無いような、カラフルな子供部屋。

水色の壁紙には星がいっぱい輝いていて、天井からは信じられない事にブランコが吊ってあった。

壁の色もベッドもタンスも色が調和してるし、驚いた事に家具が低くて全部子供目線になっている。

まるで夢の中に居るような子供部屋だった。

それに比べて僕の子供の頃なんか…障子張りの畳の渋い部屋で砂壁を擦ると指に砂がついたりしていたっけ。

障子だから廊下からの風が寒くて、音楽を聞いていても外に音が漏れてうるさいとよく怒られたりしたものだった。

「凄いなぁ〜いいなぁ…チビちゃん♪」
「チビじゃないよぉ…くるみだよぉ〜」
「ゴメンね、くるみちゃん」

自分の部屋のおもちゃで遊び始めたくるみちゃんにしゃがんで目線を合わせると、くるみちゃんはモジモジしながら俺の顔をじっと見つめてきた。

「あにょ…お名前…何とゆいますか///」
「お名前、僕の?」

自分の顔を指さしながらそう聞くと、くるみちゃんは頬をピンク色に染めながら指をフニフニさせてコクリと可愛く頷いていた。

「あ・き・ら、だよ、賀川あきら」
「アキラ…しゃん///」
「うん、よろしくね♪」

そう言ってくるみちゃんを抱き上げると、キャッキャと笑いながら僕にギュッと抱きついてきた。

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