《MUMEI》
両親
ふたりの話は産むとか堕ろすとか、決定的な話にはならなかった。

オレと有理には両親ともいないから問題ないけど、早苗さんはそうはいかない。

ただでさえも19歳とまだ未成年の上に、相手はまったく歩けないときた。その上、時の人。

ご両親が許してくれる訳がない。

ふたりの問題は山ほどあるんだ。

「早苗さん、何ヶ月なんだって?」

「さぁ……。聞かなかったけど」

「お腹あんまり出てないし、つわりって言うのか?吐こうとするやつ。まだ3ヶ月とかじゃないか」

「じゃあいつ頃?3ヶ月前にやって……」

「ちゃんと避妊してた?」

「一回……外れたことあったな。あいつの中で…」

「ちょっとしたことでも妊娠したりするんだな…」

「お前は気を付けろよ。もう少し…ちゃんとな」

「後悔してんのか」

「後悔って言うか早すぎたな、とは思う。オレ達の場合は特に順番ってものがあると思うんだ」

「順番?」

「オレ、こんなんだろ?早苗の両親にまず関係を認めてもらってから結婚とか子供なんだよ。それが妊娠ときた。やっぱ順番って大切だよ」

「……もうそれ考えても遅いし、早くした方がいいよ。産むなら挨拶とかあるし、堕ろすにしても未成年って親のサインとかいるはずだぜ」

「……嘘」

目を丸くした有理に逆にオレが目を丸くした。

「嘘じゃねぇよ。大体どっちにしても挨拶って必要だろ。前もって言っておくけど、代わりは嫌だからな」

「……はっ?い、いやいやオレそんなことかっ考えてないから!?」

「声裏返ってるぞ」

有理は慌てて弁解したせいで逆に墓穴を掘った。

「やっぱり考えてたな?そんな風にまた騙していいことなんてないぞ」

でも……と有理は渋った。有理が頼れる血縁も友人もオレしかいないのはわかってる。

代わりにはなれなくても、相談相手にはなってやるからさ。

お前はその自分を早苗さんの両親に認めてもらえるように頑張れよ。

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