《MUMEI》
キス
貢が戻って来ない。
店(コンビニ)からまだ戻って来ない…。

ガリガリ君頼んだだけなのに30分はちょっとおかしい。貢はマンガも小説も読まないから立ち読みもないし。
…―――

「あ〜もう!!」
俺は部屋を飛び出した。

エレベーターで一階に降りたところで
「あ!陸ちゃん!」
「聖〜、ただいま」
玄関にいる俺の兄…
佐伯陸に出くわした。
「陸ちゃ〜ん」
抱きっ!
「聖、一段と可愛いくなったな」
ムギュ〜

兄弟抱き合って頬を擦り寄せ合う。
「陸ちゃんもっと帰って来てよ〜、寂しい」
「ごめんね?つい面倒くさくて」
陸ちゃんはそう言いながら俺を更にきつく抱きしめた。
「今日は久しぶりに一緒に寝よう、朝まで抱っこしてあげる」
俺の頬にチュッてキスをする陸ちゃん。
俺も陸ちゃんの首に腕を回しながらチュッって返した。
陸ちゃんとは高校入ってから初めて合う。
陸ちゃんは滅多に現れない隠しキャラな兄貴なのだ…。


「今コンビニの脇で、激しいキスしてるバカップルいたよ」
「そうなんだ?」
「女の子なんか男の股間揉みながらおっぱい擦りつけてたよ、全くラブホでも何でも行けばい〜のに…
はあ、聖はあ〜なるなよ?あんな常識ないの友達にもしちゃダメだ」
「ハハッ!ならないしダチにもそんなの居ないって、そういえば前にもいたんだよそんなバカップル〜、
もしかしたらおんなじ奴らかも、長身の男と長身の背中まで髪ある女の子だった?」
「あ〜!そうだった!そうそう……――――――って……
――――――、あの、何かご用でしょうか?申し訳有りませんがここは店舗じゃございませんので……」
「貢!遅いよ!」
俺は陸ちゃんから離れ貢の手から袋を奪い取る。
「あ〜、ガリガリ君溶けてる〜、何やってんだよも〜」
「……コイツだよ」
「え?何が?」
「キスしてたバカップルの片割れ…、なんだ?聖の友達だったのか?」
「――――ウソ…」
良く見ると貢の唇、ルージュかなんかがついてるのか色がついてる。
―――シャツにべっちょりファンデーションついてる……。
「――貢…、今女の子とキス…してたの?」
「―――うん」

バンッ!!

「「聖!!」」


俺は家を飛び出した。

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