《MUMEI》

「さ、佐伯?こんな時間にどうして」
「い〜から!今日は泊めて!はい!差し入れ!」
俺は日高に袋を渡す。
「おい!これ溶けきってる〜」
「ごくごくおいしく飲め!お邪魔しま〜す」
「ど〜ぞ〜!」
なんて奥から日高のお袋さんの声がした。
俺は靴脱いで二階に上がる。
日高はブツブツ言いながらも嬉しそうに笑っていた。


「相変わらず足の踏み場もない…」
「ま〜そ〜ゆうなって。ほい!お袋からの差し入れ〜」
ビールと枝豆テーブルかきわけて置く日高。
「久しぶりだな、佐伯来るの、7月来たっきり?」
「―――そかも…」
日高はビール飲みだした。俺も遠慮なく飲みだす。
「―――なあ、恋人も大切かも知んないけど親友も大切に…っておい!泣くなよ!」
「え?へ?」
目元に触れたら確かに水滴が…
「グズッ、グズッ…」
「――長沢になんかされたのか?」
「ち、違う〜、長沢がなんかしたんだよ〜」
グズグズ、涙が滝。
切ない。
辛い。
も〜イヤあ!
俺は泣きながら経緯を話した。

すると日高、ビールをテーブルに置いて俺を抱きしめてきた。
「長沢はひでえ奴だな、俺の親友男無しじゃいられねー躰にしといて女に戻るなんて」
「〜〜〜〜!!」
男無しじゃいられねー躰って台詞気に入らないけど…
事実だからどうしようもない。
毎日毎日抱かれるのが当たり前だから
「どうしよう、グズッ、俺…、愛人でもい〜から貢の傍にいたいよぉ」
流れ出る鼻水、日高のシャツにつく。
「長沢の奴め〜、こんなに一途で淫乱な佐伯をバカにしやがってくそ〜!羨ま…、いや、ただじゃおかん!」

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