《MUMEI》

「あ、いた」



声に振り向くと、私の姿をした椎名くんが駆け寄ってきた。



「…今日さ、学校終わったら―…」



少し言いよどむ椎名くん。



「分かってる。空手、でしょ??」



私が言うと、椎名くんは顔をほころばせて



「おう、」



と言った。

私が、



「…いま瀬田くんと喋ってたんだけど、
瀬田くん、椎名くんのこと心配してたからさ、
―…戻ったら、ちゃんとありがとうって言うんだよ?」



と言うと、

椎名くんは一瞬驚いたように目を開くと少し俯いて、



「…おう。」



と、言った。



…ほらね、やっぱり照れるんだ。



―私も…



私も、戻ったら、

祥ちゃんに『ありがとう』って言わなきゃ、って思った。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫