《MUMEI》 「あ、いた」 声に振り向くと、私の姿をした椎名くんが駆け寄ってきた。 「…今日さ、学校終わったら―…」 少し言いよどむ椎名くん。 「分かってる。空手、でしょ??」 私が言うと、椎名くんは顔をほころばせて 「おう、」 と言った。 私が、 「…いま瀬田くんと喋ってたんだけど、 瀬田くん、椎名くんのこと心配してたからさ、 ―…戻ったら、ちゃんとありがとうって言うんだよ?」 と言うと、 椎名くんは一瞬驚いたように目を開くと少し俯いて、 「…おう。」 と、言った。 …ほらね、やっぱり照れるんだ。 ―私も… 私も、戻ったら、 祥ちゃんに『ありがとう』って言わなきゃ、って思った。 前へ |次へ |
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