《MUMEI》 おれたちは取りあえずそれぞれの家に帰ってから、おれんち―『椎名酒店』で合流することになった。 「じゃあ、また後でね」 「おう」 蓬田を見送った後、おれも蓬田家に足を向ける。 …あいつ、やっぱ疲れてんのかな。 さっきため息ついてたし… 蓬田の疲れたような笑顔を思い出す。 無性に腹が立った。 ―…何も出来ない自分に、だ。 蓬田家の玄関を開けると、ゴジラが千切れんばかりに尻尾を振って、おれを出迎えた。 おれが蓬田に会わせてくれることを知ってる。 懸命に尻尾を振るゴジラに対して、申し訳ない気持ちになった。 前へ |次へ |
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