《MUMEI》 「……国雄の店の社長だったんだな。」 昭一郎はその辺の壁にもたれ掛かった。 「俺、跡継ぎから外れて自由に経営し始めたんだ。 直感で、金になるって分かったからな。意気消沈なとこ上手く囁いて利用させてもらった。」 自分の机から離れる余裕は無い。 「金づるにはなりそうだ。」 相変わらずの毒舌。 「……怒らないのか?」 俺が国雄をこの世界に引っ張り込んだようなものだ。 「怒り……越えているよ。」 平淡なイントネーションは本心なのか惑わす。 そりゃあそうか、俺は昭一郎に人として最低のことをした。 前へ |次へ |
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