《MUMEI》

「姉さん、入っていい?」

姉さんは客間で荷物の整理をしていた手を止める。

「……うん。」



入ってみたものの壁際から動けない……。

「此処。」

指で空いたスペースに座るように指示された。



「子供、聞いたよ」

母さんは上機嫌に話していた。

「……良かった。美作の血は姉さんが守ってくれた。」

俺の言葉で姉さんは弾かれたように見た。

「あんた、そうなの?…………よね。」

戸惑いながら姉さんは何度も瞬く。

「そうだよ、俺は昔から男が好きだった。」

嘘はつかない。

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