《MUMEI》

『…仕事は明日からっつうことで、今日は帰っていいぞ。』


『分かった…。』


“明日からか…。帰ろ。”


『ストップ!!
それはダメでーす!!』


『稜兄…!?
…いつからそこに?』


階段から稜兄の声がした。


『璃久。お前は今日から働いてもらう!
この散らかった家を見ろ。あと、飯も頼むぞ。』


『稜兄…今日はもういいじやないか。俺、弁当買ってくるからさ…。』


『ダメだ!!』


稜兄は頑固だった…。


『坂城くん…いいよ。
やるから…。稜兄…さん。…すぐ作りますから。』


『よしっ!』


稜兄は満足気に二階へと上がって行った…。


『…悪いな。
俺も手伝うから…。』


坂城くんは申し訳なさそうに呟いた…。
きっと今までも、このお兄さんの我儘に振り回されてきたのだろう…。
少し坂城くんに同情した。


それから坂城くんと一緒に手分けして急ピッチで家事を片付けた…。何とか食事も出来上がったので…。


『いただきます。』×3


3人で夕食を食べることになった…。


『…お口に合いますか?』


黙って食べ続ける稜兄に聞いてみた…。


『うん。すげぇ旨いよ!
お前やるじゃん(笑)!』


ホッとした…。
うちは母子家庭でママは仕事が忙しかったから、家事はよくやってて、自信はあった…。


でもこの“稜兄”に認められるか不安だった…。


『おかわり!』


稜兄は私の料理が相当気に入ったらしく、スゴい勢いで食べ続けた…。


坂城くんは相変わらず無口で無表情だったけど、何だか、この正反対の兄弟を見ていたら可笑しかった。


『ごちそうさまでした。』


食事が終わり、後片付けをしていると、稜兄が私と坂城くんを呼び付けた。


“今度は何だろう…。”


不安だった…。


『お前等、そこ座れ。』


私と坂城くんはソファーに並んで座った。


『今から、我が家のルールを発表する!
一回しか言わねぇから、よく聞けよ!いいな!?』


“ルール!”
……って一体何なの!?


私は、得意気に微笑む稜兄の顔を見て、嫌な予感がした。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫