《MUMEI》

「ムリ〜〜〜!!」
日高の額と頬をおもいっくそ掴み力強く上に持ち上げる。
「な、なんでえ!き、キス〜!!」
「ヤだよ!キモチわりい!キスはムリだってば〜!」
「なんで!したい!
してみて〜んだよ!
ベロ絡ますの一回でい〜からやってみて〜んだよ〜!!」
「余計ムリ〜!!」
細い目をおもいっくそ見開き、タコみたいな口した日高が力の限り近づいてくる。
俺の腕の力がどんどん限界に近づき筋肉がプルプルしてくる。
「やだあ!キスは貢じゃなきゃヤだ!」
「なに言ってんだ!アイツは女としてたんだろ?」
「でもヤだ!日高キモイしキモすぎるしキモ臭いからヤだあ!!」
「なんだと〜?キモキモキモっておい!もう手加減しねからな〜!」
瞬間でがばっと両手首掴まれて、そして日高はうすら笑いを浮かべた。
「やだあ〜!」
「いただきま〜す」
瞼を閉じたタコ唇の日高がズズズと迫ってくる。

「〜〜〜!」

―――もうダメだ…


俺は観念し、せめて歯をくいしばり顔を横に背けた瞬間
ガチャ…ガチャガチャ――

ドンドンドンドン!!

「大変よ大変よ!!
佐伯陸さんが来てるわよ!!開けなさい!
ちょっと!早く!!」
興奮した日高のお袋さんの声。
「――――」
「――――」
「退いて」
「――――はあ…」
日高は俺からノソノソと離れ…

「う゛う゛…、キスしたかった〜」

ドンドンドンドン!
「何やってんの!早く開けなさい!」


――はあ…


助かった

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