《MUMEI》

白戸の印象は『大人』だ。

初めて鬼久保君を引き連れて来たときなんかは完璧に引率の親みたいになっていた。

一年にしては発育もよく、私も167もあるのに目線が上を向いている。

姿勢が良く、真面目そうだけど柔らかく笑う。
多分、育ちが良いからこんなに落ち着いているのだろう。


「先輩、喉渇きませんか?奢りますよ。」

白戸は手を引いて自販機まで誘導する。
白戸の指は手タレのように長く美しい。

その美しい手に反して重厚な絵画を描く。



「あの、私自分の教室に忘れ物しちゃって……」

長い指を振り切って逃げ出した。
早鐘のような心音を察知されたくなかった。
鬼久保君と白戸は同い年とは思えない。

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