《MUMEI》
レベル1
「じゃあレベル1からどうぞ!」


半分キレ気味の副委員が言うと、祐とレベル1の女子が教室の中央に並んだ。


「よろしくね」

「は、はい…」


祐に笑顔を向けられ、女子はポッと赤くなった。


「そこ、誘惑しない!」


副委員が怒鳴る。


「じゃあ、問題は三問出します。先に二問答えた方が勝ちですから」

「了解」


副委員は電卓を構えた。


かなり増えていたギャラリーが静かになり、行方を見守る。


問題は、一問毎に難易度が上がる。


一問目は、足し算と引き算のミックスだ。


「112−12+100+132+10−42!」


「300!」


副委員が言い終わると同時に叫んだのは、祐だった。

レベル1の女子は、最速でも問題を言い終わってから一秒後に答えていたから、ポカンと口を開けて祐を見た。


「いつも、秀(ひで)おじさんに店の仕入れの計算手伝わされてるからね」


そう言って、祐は


二問目の掛け算と割り算がミックスされ、一問目より数字が一つ追加された問題も、副委員が問題を言い終わると同時に正解を叫んだ。


「ごめんね」


祐がレベル1の女子に謝ると、女子は反射的に首を横に振った。

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