《MUMEI》
決着
(やべっ…)


俺は、祐の攻撃をかわすのにかなり必死になっていた。


体力も限界に近付いていた。


「残り十秒!」


副委員の言葉に一瞬俺の気が緩んだ。


「うぉ?」


かがんで避けた拍子に、バランスが崩れた。


(しまった)

「もらった!」


仰向けに倒れていく俺に、祐が手を伸ばす。


…傍目から見ると、俺が祐に襲われて、押し倒されていくような形になっていた。


「残り五秒!」


(こうなったら…)


俺は、ハチマキを手で押さえた。


「あ〜、汚ね〜ぞ!」

「汚くない!反撃はしないって言っただけで、防御しないとは言ってないし!」

「何だと!」


祐は、普通じゃない握力を使い俺の腕ごとハチマキを外そうとする。


俺の手とハチマキが、徐々に動く。


当然、前髪も上がっていく。


(だ、駄目だ!)


残り一秒。


俺は、諦めて手の力を緩めた。


そのまま一気に祐が俺のハチマキを取る。


「…?」


…と、思ったら、祐の手がピタリと止まった。


「タイムアップ! 残念でした〜!」


副委員が歓喜の声を上げた。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫