《MUMEI》
反則技の顔
「いい加減、離れてもらえませんか?」


俺は、俺の顔を凝視している祐を見上げた。


「…あぁ」


シュルッ


祐は、何故か俺のハチマキを取り、上がった前髪を元に戻した。


「今更取っても遅いですよ!」

「わかってるよ」


ゆっくり立ち上がった祐は、ハチマキを副委員に渡しながら、苦笑した。


「反則技だぁ〜」


祐は天を仰いだ。


(何の事だ?)


俺は首を傾げた。


「ま、まさか、祐も…祐也の事、そういう意味で好きなの?」


津田さんが、小さく呟いたのを、俺は聞き逃さなかった。


「どうしよう、明日、改造した祐也を見たら、皆祐也に夢中?
でも、改造はしたいし…
でも…」


これから、俺は、明日の本番に備えて、津田さんの両親の知り合いの美容院に行く事になっていた。


「…やめます?」


俺が、人気者になるかはわからないが、俺は顔を出しても出さなくてもどうでも良かった。


「だめ! やっぱり見たい!」


そう言うと、津田さんはドレスのまま、俺を、津田さんの母親が待つ校門に引っ張っていった。


まだ俺の顔をよく見ていない他の連中はただただ呆然としていた。

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